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Solo Prowler Geist
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未だ、迷走中。

by DunkelFanG_Ez00
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初めての
初めての_c0111048_0125365.jpg
ISSS命中 in WarAge。

どうも皆様こんばんは。
毎度お馴染み『Solo Prowler Geist』でございます。

しかし、未だに戦果無し。 初ゲットはいつになるのか……。


ところで突然話は変わりますが、EBN12話 Part2でございます。




『戦後処理部隊EBN 12 Part2』

「もう少し良い医者と設備がありゃあ、その傷痕も完全に消せたんだろうが……」
「別にいいさ。それにこの顔の方が、動くのに都合がよくなるかもしれないしな」

その日、ダーイン山坑道入口の前に立つスカーレットの姿があった。

「やっぱり、行っちまうのかい」
「あぁ、ホントに世話になったな。爺さん」
「ホントにそうだな。得物やら何やらごっそり持っていきやがって。しかし……」
「なんだい?」
「へっ、なァに。あん時に比べりゃ随分とマシな面構えになったと思ってよ」

見送りに出たドワーフは、彼女を見上げながら言った。ドワーフ達の手で完全に修繕
された装備を身に纏ったその顔には数多の傷痕が刻まれるがままになっている。
顔中が禍々しき形状と色で彩られる中で、見開かれた彼女の眼差しだけが、決然とした
意志を宿すかのように強い光を放っている。

「止せや、気持ち悪りィ。けど多分、そりゃやれることが見つかったからだと思うぜ?」
「そうか。ま、達者でやれよ」
「ああ、爺さんも」

そして、彼女の目はドワーフの足元にいる犬に向けられた。彼女は屈み込み、己の命を
現世に繋ぎ止めてくれた犬の頭を愛しそうに撫でながら、

「……おまえも、元気でな」

そう言うと、彼女は彼らに背を向けて山を降り始めた。


彼女が山を降りてから取り掛かったのは、かつて彼女が潜入した山賊勢力の調査だった。

彼女の飼主が消息を絶った以上、もう既に果たすべき任務ではないのであるが、それでも
心の内で幾つか引っ掛かっていること―――特に首領の正体と消息について―――が
あったが為の、所謂、独断専行である。

やがて、噂が立った。

戦場にて、勢力を問わず無作為に殺戮を続ける赤毛の暗殺者が現れるというものだ。

その冷然たる両眼に睨まれたが最期、幾ら遠くに逃れようとしても生き延びることは
出来ず、仮に僅かな時を生き延びたとしても、無数に刻まれた傷だらけの顔と、正に
此方を飲み込まんと燃え盛る焔のような赤毛、死神の鎌の如く鋭く冷たい両眼は、
悪夢となって標的を襲い、やがて死に至らしめるのだという。間も無くその暗殺者は
こう呼ばれるようになった。数多の傷刻まれし殺戮者―――スカーフェイス、と。


「そんな、噂するようなもんかねェ……」

一方で、その噂の根源となった当の彼女は、つけられたあだ名こそ評価していたものの、
噂そのものには当惑していた。即ち、言われるほど無作為に殺しちゃいねぇ、と。

彼女が実際に殺害に及んだのは件の山賊勢力の流れを汲む者達であったし、彼らに尋問
したところ、過度に抵抗された為、止むを得ず殺害したというのが正しいのである。
彼女の手がエルガディンの人間に及んだのは、調査の過程でエルガディン王国に関わりを
持つ者がいるらしいことが分かった為であった。

ビスク軍の人間にまで手が及ばなかったのは、彼女自身が未だ登録上はビスク軍属だった
からに他ならない。しかし、(立場上は)上官であり主人でもあるドワイトに棄てられた
以上、彼女がビスク軍に忠義立てして残る理由は既に消滅しているのである。

それでも残らざるを得なかったのは、調査の延長上、已む無く敵であるエルガディン軍や
中立勢力の人間をを倒さざるを得ぬ事情が発生し、実害に及んでいる為であった。そんな
状況で他勢力に降ったところで、彼女の居場所など見つかろう筈も無い。それどころか、
彼らは仇討ちという名目で彼女を討つだろう。

だが、強いてもう一つ理由を挙げるならば、それは彼女の心情に因るものであった。
即ち、ドワイトに倣っての脱走行為であると勘繰られるのが癪だった、ということである。

彼女とドワイトの主従関係とその経緯について、当のドワイトはしきりに外部への漏洩を
避けるように工作していたことを、彼女は知っていた。無論、一部の目ざとい同軍の人間
には気付かれていた、ということも。毎回指令を出す場所を変え、人のいない時間帯に会い、
軍の公式文書に残らぬように常時口頭で指令を下していても、嗅ぎ付ける人間はいるものだ。

別に自身の行動をどう言及されようと構いはしないのだが、それにドワイトを絡められる
ことは迷惑千万極まりない話であった。彼女はドワイトを憎みこそすれ、忠誠や尊敬の念を
抱いたことは全く無いのである。

自分の人生を彼の思うがままに変えさせられ(その原因は彼女自身のミスにあるにしても)、
あまつさえ己が危機に陥れば、後も顧みずに自身の無事を優先する男にそのような情念を
抱ける筈も無い。

そんな人間と一緒くたに扱われたくない、彼女に残留を決めさせたのはその一念のみだった。

                      ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

「それがまた、奴に会っちまうなんてなァ」

既に陽も落ちんとするビスク港で一人、スカーフェイスは苛立ち紛れに唾を吐き棄てた。

「我ながら間抜け過ぎるってもんだ……」

                      ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

件の山賊勢力の調査が一通り落ち着いてからその後、スカーフェイスは単身での偵察で得た
情報の提供や暗殺で日銭を稼いで過ごしていたが、やがて戦争が終結した。

だが、戦争が終わったところで、彼女には何の感慨も沸いてはこなかった。日銭を稼ぐ手段、
今の彼女にとって戦争とはその程度のことでしかなくなっていたのである。

終戦からの一年こそ、今まで稼いできた多少の蓄えや賞金の掛かった盗賊や敵勢力の残党を
狩って得た報酬で何とか生き延びることは出来た。

しかし、今後どうするか。

いつまでも賞金首が跋扈するワケでもなし、戦争が終わった今、戦いのみで身を立てる
ことはいずれ困難になる筈だった。平和な時代の戦争屋ほど疎まれるものは無い。

唯一金になりそうな手段は調合による薬剤精製だったが、個人的事情で資材を入手するコネは
皆無に等しかった。よしんば仮にあったとしても、当局に発見されれば資材没収の上、投獄
されるのがオチである。そんなマヌケで捕まるのは御免だった。

一時は何もかも忘れて、以前世話になったドワーフ達のところで資材を切り出す手伝いでも
しようかと考えた。喰いっぱぐれは無いし、多少なりとも世間の役には立つ。だが、それは
最後の手段だった。「やることが出来た」と出て行った手前、結局得られたのは一つの仮説
だけ、と言って出戻っては面子が立たない。


そんな感じで今後の見通しを立てていた或る日、彼女はすっかり崩壊しきったビスク城下町を
徘徊していて、妙な気配を感じ取った。

(―――尾けられている?)

それにしては、気配を殺していないどころか、足音すら抑えていない。贔屓目に見ても尾行に
おいては素人の動作である。とは言え、ずっと後ろを尾けられるのはあまり良い気分では無い。

(―――仕方ない)

彼女は少しずつ歩く速度を速め、尾行者を巻こうとした。当然ながら尾行者も速度を速める。

港から東地域に出る門まで差し掛かった時、下り坂で尾行者の死角に入ったのを見計らって
バニッシュクラウドを発動させる。門出口の脇に姿を隠し、尾行者が後を追って出てきた
ところで背後に回りこみ、首筋に脇差の刃をあてつつ、物陰に連れ込む。戦後間も無い状況
とは言え、白昼堂々街中で人殺しはまずい気がしたのだった。

「腕は鈍ってないようだな、レベッカ」
「……!」

物陰に連れ込み、グッと首筋にあてた刃に力を入れたところで、その尾行者は言い放った。
突如として告げられた「本名」に、スカーフェイスは僅かに動揺した。彼女の「本名」を
知る者は、そう多くは無い。

あと僅かに力を込められれば、自身の頚動脈が断ち切られる状況にも関わらず、尾行者は
動揺も怯えも無く、ただただ冷然としたままであった。彼が黙ってローブのフードを取った
ところで、彼女を更に動揺させる事態が待っていた。

「ドワイト……!」
「久しぶりだな、レベッカ。元気そうで嬉しいよ」
「テメェ……、よくもぬけぬけと……ッ!」

フードを脱いだ後に現れたその顔は、紛れも無いドワイトのそれだった。彼に対する憎悪と
彼を殺せる歓喜とが、スカーフェイスの心中で渦巻き始める。

「何があったかは知らないが、随分と感情を表に出すようになったものだな」
「テメェが言えた義理か、ゲス野郎……。今ここで首ぶった斬ってもいいんだぜ!」
「ならば斬りたまえ。躊躇う必要はあるまい?」
「言われんでもッ!」

更に力を込めたところで、彼女は後頭部に強打を喰らい、崩れ落ちる。

「くっ、誰だ……!?」

彼女が振り返った先には、プレート装備に身を固めた巨漢が棍棒を手に立っていた。

「手加減をしろと言った筈だ、ボルクレイド。殺してしまっては元も子も無くなる」
「……殺す気でかかれ、と言ったのは貴様の筈だが?」

スカーフェイスは己の愚かさを呪っていた。殺すべき対象に気を取られ過ぎて、背後への
注意を疎かにするとは、アサシンとして迂闊にも程があるというものだった。昏倒させられ、
ドワイトに向けて膝を立てている状態のところへ、彼の細剣が彼女の眉間に向けられる。

「無様なものだな、レベッカ」
「まさか、没節義漢のテメェにお友達がいるとはな。意外だったよ」
「……別に俺は奴と友達のつもりは無いんだが」
「けどよ、アタシ相手にチェックメイトっつうにはまだ早いと思うぜ、ゲス野郎が!」
「む……?」

言うが早いか、スカーフェイスはネイチャーミミックを発動して姿を消し、一気にドワイトの
背後へと回り込んで、腰部ホルダーから投擲ナイフを抜き出して構える。

「死ィ……!」

投擲姿勢に入った途端、手にした投擲ナイフに鈍い感覚を覚えた。見ると、ナイフの刃が
根元から弾け飛んでいる。咄嗟にスカーフェイスは折れた投擲ナイフを地面に投げつけて
バニッシュクラウドを発動。姿を消して相手の位置を探る。

(―――畜生、狙撃手までいるのかっ!? 本気でアタシを殺す気か!)

ドワイトが自分を殺す動機などそう多くは無い。彼自身の過去を隠蔽するべく、それを知る
人間を、手下を使って潰しているのだろう。だが、スカーフェイスには彼の為に死んでやる
つもりなど毛頭無かった。

(―――そう易々と殺れると思ったら大間違いだってことを、思い知らせてやる!)

刃の弾け飛んだ方向から、狙撃地点はある程度割り出せるが、狙撃手を攻撃する手段は無い。
下手を打つと、探している間に棍棒野郎から一撃を喰らう。

(―――なら!)

一気にドワイトまで詰め寄り、先ほどと同じように後ろから取り押さえた上、今度は背後
からの攻撃を防ぐ為に壁を背にして立つ。

「一気にチェックメイト、ってな……。さぁ、そこのデカイの、得物を捨てな!」

スカーフェイスの言葉を受け、ボルクレイドが手に持った棍棒を捨て、両手を上げて後頭部に
回す。それを確認すると、彼女は次に何処にいるか知れない狙撃手に向けて声を張り上げた。

「何処にいるか知んねぇけど、アンタも銃を捨てな! ゲス野郎を道連れにアタシの脳味噌を
 ブチ撒けたいってんなら、話は別だけどねェ!」

無論、スカーフェイスにドワイトと心中するつもりは無い。彼女の瞬発力をもってすれば、
ドワイトに着弾した瞬間を見計らって脱出することなど造作も無い。その自信があってこその
カマかけであったが、向こうには主人を道連れにしてまで彼女を殺す度胸はないようだった。

「所詮、ゲス野郎についてくるお友達は腰抜け揃いってか。哀れだな」
「…………」
「どうだ、ゲス野郎ならゲス野郎らしく、命乞いでもしろよ」
「…………」
「もっとも、助けやしねェがな……!」

だが、ドワイトから発せられた言葉は単なる命乞いのそれでは無かった。

「……愚かなことだ。折角鍛えてやった力を自身の欲求を満たす為にしか使えんとは」
「何だァ!? 口先八丁で丸め込もうってのか」
「確かに私はビスク軍を裏切り、出奔した。だが、それは私利私欲の為では無い」
「戯言を……!」

スカーフェイスが刀を握る手にグッと力を込める。プツ、と首の皮が切れる音がした。

「戦争は早々に終結すると予期した私は、その時に備える時が来たと考えた。戦後の復興に
 用いる為に、有用な人材を戦火から遠ざける必要があったのだ」
「…………」
「その為には、たとえ今裏切者の汚名を被ろうと構わなかった。いずれ私の先見性を人々が
 認めてくれることを信じて、私は敢えて軍からの脱走を実行に移した」
「莫迦げた妄想だな。そんな戯言、誰が信じるってんだよ。所詮テメェが裏切者で没節義漢
 だってのは変わりがねえだろうが」
「……かもしれん」
「だったら! 今ここで死んで詫びな!」
「だが、私には信念がある! 戦争で荒み切った島と人心を復興し、復興を通して国や勢力を
 越え、この島を一つに統一するという信念が! その為ならば、敢えて下種と呼ばれよう!
 裏切者の汚名を甘んじて受けよう……!」
「なっ……」

その時、彼女は信じ難いものを見た。ドワイトが涙を流しているのを。

「テメェ……」
「殺すのならば、好きにするがいい。ここで討たれるのならば、それが私の宿命なのだろう。
 だが、私を喪うことは戦後復興の道を断つことと同義だと思え。そして、私を喪って初めて、
 私の言葉が決して戯言などではないことを思い知るだろう」
「…………」
「分かるか。信ずるべき信念を持たぬ者が討っていいほど、今の私の命は安くは無い……」
「くっ……」
「それでも討つか、私を?」

彼女は、刀を下ろして鞘に収めると、ドワイトをボルクレイドの方へ突き飛ばした。巨体に
受け止められた彼は、首筋に手を当てつつ彼女に不敵な笑みを向ける。

「分かってくれて結構だ」
「ふざけろ。テメェの妄言を、全部信じた訳じゃねぇ」
「それでも一向に構わん。それはそれとして、一つ君に相談がある……」
「なんだよ」
「その力を私に貸す気は無いか? 信念無く島を徘徊するよりは間違いなく有意義だと思うが」
「どの口が言いやがる……! 八つ裂きにされなかっただけでも有り難く思いやがれ!」
「しかし、今の君はその日の糧にも困っている身の上ではないか。贅沢さえ言わなければ、
 今よりは遥かにマシな生活を保障してやるつもりだが?」
「この……」

やはりこの男は殺すべきだ、とスカーフェイスが刀を抜いて肉迫しようとしたところへ、先程の
巨漢が盾を構えて立ち塞がる。よく見ると、彼の片目は兜で隠されているように見えた。
片目が使えないのであれば、死角から攻めることは容易い筈だったが、彼もそれは心得ている
ようで、片目の視界のみで彼女の動作を確実に捉え、死角から攻めることを許そうとしない。

ならば身を隠し、巨漢を無視して突っ切ればいいだけの話だが、彼の得物が棍棒なのがそれを
難しくしていた。街中とはいえ、否、街中という移動可能範囲が限定された状況であればこそ、
クウェイクビートによる烈震波、ヴォルテックスホイールによる巻き込みは、対象への接近を
阻む強力な盾、という手札になり得る。

先程受けた全く躊躇の無い後頭部への一撃を見ても、目の前に立つ巨漢は奴を守る為に手段を
選ばないであろうことは想像に難くない。間違い無く、その手札を切ってくるだろう。

それに、彼の全身を覆う鎧、重装備には足止め狙いのシャドウスティッチは役に立たない為、
彼を突破する手段としては使えない。かつ、彼の鎧はパーツの継ぎ目を金属繊維で補強されて
いるらしく、パーツの継ぎ目を狙ったピンポイント攻撃で怯ませることも出来そうに無い。

周囲に潜んでいる狙撃手の存在もある。上手く巨漢の懐へ飛び込めたところで、彼がインパクト
ステップやタックルを繰り出して押し返し、宙に浮かされてしまえば、狙撃手の恰好の的に
なってしまうことは避けられない。

(―――此方から攻めれば、どの道殺られる……)

かと言って、ここで攻めあぐねていては、ドワイトを取り逃がしてしまう恐れがあった。
己の命の危機を何よりも恐れる彼のこと、此方が殺意を持っていることが明白となった
以上、ここで逃がしてしまえば警戒を強めてしまい、殺すのが困難になってしまう。

標的を目の前にして動くに動けぬもどかしさに、彼女は幾分心を乱しそうになっていたが、
それでも何とか踏み止まっている―――少なくとも、彼女自身そのつもりだった。

不意に、ガラン、という音が鳴った。

普段通りの彼女であれば、見え透いた陽動だと気にも留めず、目の前の巨漢に意識を集中して
攻める機会を窺い続けていただろう。しかし、心を乱されかけていた彼女は、不意の金属音に
一瞬視線を音のした方へ逸らしてしまっていた。

その一瞬を突いて、巨漢が側面に回りこみ、彼女へと迫る!

(―――このデカブツ、重装の割に速い!?)

己の迂闊さを呪いつつも、彼女はこの状況に対応すべく動いていた。

重装鎧の構造的弱点である各パーツの隙間が狙えない以上、この場合における唯一の急所は
ただの一つしかなかった。即ち―――

(―――デカブツの片目を潰す!)

彼女は刀を水平に構え、左掌を柄尻に押し当てると、巨漢の目を狙って一気に突くべく刀を
走らせたが、巨漢の伸ばした腕のほうが一瞬速かった。金属に覆われた手は、重装の巨漢とは
思えぬ手捌きで素早く刀を掴み、刃先を地面に向けて振り下ろした。

彼女の刀を封じた巨漢は更に彼女へと迫り、遂には互いの身体が密接する程にまで近づいた。
この状態では攻撃に転ずることも難しいが、奇妙なのは巨漢にも攻撃の意思が感じられない
ということだった。彼女はたまらず小声で訊き出す。

「テメェっ! どういうつもりだ!」
「……お前と奴との間に、どういう事情があるかは知らん。知りたいとも思わん」
「だったら、とっととどきやがれデカブツ野郎!」
「だが! 今、奴に死なれては俺が困る……!」
「阿呆かテメェは! あのゲス野郎に義理立てする価値なんざ、微塵もありゃしねぇんだぞ!」
「……そんなことは分かっている! だが、俺にとっては、やっと掴んだ手掛かりなんだ!」
「!? テメェは……?」
「……頼む、ここは引いてくれ」
「…………」

どうやら、少なくともこの巨漢は本心からドワイトに忠義立てしている訳では無いらしい。
恐らく奴の甘言に釣られたクチだろうが、それほど切迫した事情が彼の内にあるのだろう。
そうでもなければ、義理立てする価値が無いと分かっていながら、彼を守るのに必死になる
筈が無い。

しかし、だからと言って黙って引き下がり、ドワイトの討滅を諦めるつもりも毛頭無かった。
しばしの逡巡の後、彼女は意を決して口を開いた。

「分かった。但し、条件がある」

                      ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

見過ごせる筈が無かった。

いくら崇高な理想を掲げるが如く御託を並べたところで、結局自身は手を汚すこと無く、
手駒をただ己がままに操っては使い潰し、不要になれば何の容赦も無く切り捨てる。

ドワイトがそんな男だということは、我が身をもって知らしめられていた。そんな思いを
味わうのは自分一人でたくさんだ。自分以外の人間に同じ思いをさせる訳にはいかない。

その為には、奴を身近で監視し得る立場にいるのが最も適切な手段と思えたのだ。

それならば、奴の言った言葉が嘘偽りであった時、或いは自身らを裏切る腹が僅かにでも
見えた時に即座に殺すことが出来よう。否、ただ殺すのでは物足りない。この世に生を
受けたことを後悔させるほどに惨めで、惨たらしい最期を味あわせ、悶え苦しませた上で
地獄に叩き落さねば、奴によって苦しめられた人間、ひいては自分自身も救われない。

これは、私の使命だ。今、奴の傍にいる私にしか出来ない「仕事」だ。


そろそろ冷えてきたと思って、灯台に戻ろうとした時、エルスティーダがすっかり酒に
やられた顔付きをして起き出して来ていた。どれだけ寝ていたのかを確かめているのか、
周囲をぐるりと見回していたところで、やがて視線が一箇所に止まった。寝ぼけ眼を
こすって再び元の場所に視線を戻すと、突然一目散に駆け出していった。

彼が駆け出していった先に見えたのは、灯台に向かって歩いてくる男二人の姿だった。
重装鎧にビスク軍服。どうやら、ボルクレイドの釈放手続は上手くいったようだ。

やがて、エルスティーダを肩に乗せたボルクレイドとドワイトが灯台に辿り着くと、
スカーフェイスは黙って立ち上がり、目の前に立つ重装鎧の男に向けてただ一言、
「よう」と言った。彼もまた一言だけ「ああ」と返す。そして二人は、黙って軽く拳を
付き合わせると、互いに微笑し合った。もっとも、ボルクレイドの顔は兜で覆われて
いる為に、その表情を窺い知ることは出来ないのだが。

「さて」

再会を喜ぶ雰囲気に水を差すように、ドワイトの冷徹な言葉が響く。雰囲気を壊された
三人は、彼に向けて少なからず怒りに満ちた視線を向けるのだが、当人はそのような
視線など何処吹く風で、三人にただ一言、告げた。

「任務だ」

12話 Part1 <<  目次 >> 幕間劇1
by DunkelFanG_Ez00 | 2008-10-14 00:19 | MoE書き殴りSS・EBN編