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Solo Prowler Geist
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未だ、迷走中。

by DunkelFanG_Ez00
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焼き直しその2
次いで、EBN編13話の書き直しバージョンとなります。

一応、原型を留めぬレベルにはなっていると思いますので、
多少の新鮮味はあるのではないか、と。

そして、例によって今後不定期に追加予定……。




『戦後処理部隊EBN 13』

ノア・ストーンの消失は、十年にわたる戦争を終結に導いた。

だが、島を覆い尽くす嵐の結界はノア・ストーンが消失して三年経った今もなお
生き続けており、島へと潜入する者を頑なに拒み、また島より逃れようとする者を
捕らえ続けている。

今やこの島は、打ち棄てられた牢獄の如き様相を呈していた。

大陸からの救援も望めず、外海へ出ることも叶わぬ今、不幸にも生き残った者達は
島で生き続けることを余儀なくされ、それぞれが自身の道を選び、散っていった。


その中に、地下深くへ潜むことを選んだ者達がいる。

今、先行する従者が持つか細いランタンの光を頼りに、最深部へと続くスロープを
降りる二人もまた、そういう者達だった。

「資材集積場を襲撃された挙句資材を接収されたのに続き、今度は崩落「事故」か。
 なんとも、我等の前途は多難であることよな」
「…………くっ」
「そうは思わんかね、参謀長?」
「ま、全くもって、面目次第もございません」

向き直った男が被る覆面の奥から覗く鋭い眼光に射すくめられ、参謀長と呼ばれた
男は消え入るような声を上げた。

(―――全くもって、ツキが無さ過ぎる……)

参謀長は心中で呻き声を上げていた。


兎角、物資不足の現状である。かつ、命知らずの野盗が徘徊する状況においては、
襲撃を防ぐ為の厳重な警備体制が要求されるのは至極当然の成り行きと言えた。

参謀長の属する機関でもその多分に漏れず、集積場に資材を運搬する時間帯を
細心の注意を払って調整し、万難を排していたのである。調整だけではどうにも
ならぬ状況においては、近隣を巡回する部隊の買収さえ行なって。

その甲斐も無く、予測外の襲撃である。

表向きはビスク第三騎馬隊による盗賊殲滅、と報じられている襲撃であったが、
聞けば集積場を襲撃したのはたった三人。しかも清掃屋だったというではないか。

精鋭とは言わないまでもそこそこの実力をもった兵士達を盗賊に偽装して配備して
いたにもかかわらず、清掃屋ごときに一矢も報いずに全滅させられるとは。

(―――誰が予測出来るものか、そんなふざけた話など!)


その事後処理が済まぬ間も無く、先日発生した事故によるアジトの一部崩落である。

(―――同盟の跳ね上がりどもめ……よくもあんな欠陥品を)

人為的に魔力を生成出来るという触れ込みで持ち込まれた、魔術師同盟内部の
一分派が製作した魔力生成装置のプロトタイプが、デモンストレーションの
最中に暴走を起こしたのである。

丁度、事後処理にかまけて遅い昼食をとっていた参謀長は、突然の事態に
愛用のマグカップを取り落としつつも、現場へ急行した。

『魔力の暴発だと! ええい、同盟の連中は何をしていたのだ!?』
『騒ぎが起こった際に逃亡した模様です! すぐに追っ手を差し向け……』
『捨てておけ! 今は被害を最小限に食い止めるのが先だ!』

デモンストレーションの行なわれていた研究区画には既に火の手がまわり、
機関内にてこれまで研究されていた成果物を貪り続けていた。

機関員が地下水を汲み上げて消火活動を行なってはいるが、火の手が
強すぎる上に暴走した魔力の生み出すエネルギー波が機関員に襲い掛かる為、
彼らは立ち往生せざるを得ない状態だった。

『……消火活動はもう間に合わん! 第二研究区画は現時点をもって放棄!
 研究員は全員退避したか!』
『退避、完了しております!』
『よし、貴様は獣魔師団にゴーレムの出動要請を! 第二研究区画へ続く
 通路全ての隔壁を彼らに閉ざさせろ! 人力では無理だ!』
『はっ、直ちに!』
『同盟のクズどもめ……このままでは済まさんぞ……!』

生成した魔力の負荷による制御装置の大破―――後の調査で判明した主因である。

制御を失ったことで暴走した魔力が研究区画を次々と破壊。アジトにあった
三つの区画のうち、第二研究区画は全壊。第一、第三研究区画もその余波を
受けて半壊という、機関結成以来の大惨事となった。

機関にとって幸いだったのは、彼らの主が対外活動でアジトを離れていたことで
あったが、施設内部崩壊という損害の大きさは到底無視できるものでは無かった。

留守を任された参謀長を主とした心ある者達は、魔術師同盟に損害賠償と装置の
製作にあたった者達の引渡しを何度と無く要求した。施設崩壊の上に貴重な研究
成果まで喪失するという多大な損害を被った機関にとって、これは考え得る限りで
最大限の譲歩であった。

だが、同盟からの返答は冷たいもので、「あくまで一分派の独断先行であり、
魔術師同盟は一切関知しない」の一点張りであった。

話し合いの無駄を悟った機関は已む無くその返答を受け入れた。否、受け入れ
ざるを得なかったというのが正しいのか。

結果として泣き寝入る形となったのだが、これには彼らなりの事情がある。


機関構成員の大半は、十年にわたる戦争を生き延びた古強者ばかりである。

逆に言えば、それは機関において整備の役目を負う生産者の絶対数が
圧倒的に少ないことを意味する。

特にゴーレムや魔獣といった強力な魔導生物の制御は細心の注意を要する上に、
制御に失敗すれば使役者の命をも危うくする高いリスクを伴うものであった。

それだけではない。

使役者とは難儀なもので、一から育成させるには莫大な時間と費用を投資する
必要がある。仮に育成しきったところで、その後には魔導生物の鹵獲、更には
鹵獲した生物を戦略兵器として使い物になるまでの調教といった、多くの過程を
経なければ、戦力としては期待できないのである。

その代わり、完成の見返りは相当なもので、主と駒の両方が完成した使役者は
一騎当千とまではいかないまでも、運用次第では一人で半個小隊クラスの戦力を
得たも同然であった。

重火器並みの火力を持つ生物を用いた急襲や、強固な金属による装甲で固めた
生物による防衛といった場面ごとの運用のし易さ、それに加えて携帯化が可能な
ことによる移動コスト削減の強みなどがある為だ。

それだけに使役者は貴重な人材であったのだが、十年にわたる戦争はその数を
激減させてしまった。育成に要する財源や物資の枯渇した状況ゆえに、一から
育成することが極めて困難である昨今、生存している使役者はあらゆる組織から
引く手数多になるほどに貴重な人材となったのである。

そんな貴重な使役者の代替品として機関が採った苦肉の策、それはる魔導生物の
調整を、魔術師同盟の構成員に委託することであった。

魔術師の中には、独自に行なう研究の延長線上、魔導生物に関する知識が
豊富な者が幾人か存在する。それらの指揮の下で機関員が調整を行なうのである。

但し、あくまで本業による調整では無い上に知識頼みによる調整の為、本来
引き出せるスペックの半分程度しか発揮できないという難点がある。

それでも、頑強な魔導生物が軍容にあることで外部への圧力や財源の誇示と
いった、組織の体面を保つ為の材料にはなる為、機関としては重要な戦力と
して扱われている。


そのような事情がある以上、同盟との協調は未だ必要であり、必要以上に
刺激を与えるのは得策ではない……というのが機関が満場一致で導き出した
決定事項であった。

そこに至った背景には、下手に同盟を刺激することで此方の内情を当局に
リークされては、機関の存続すら危うくなる、という事情もあるのだが……。

(―――組織を守る為の已む無き決定、それは分かる……だが)

その決定の煽りを受けたのが、他ならぬこの参謀長であった。

(―――これでは、その前に私の身がもたん)

立て続けに発生したそれらの事故……否、人災の事後処理は、先述の問題と
同様に、事務処理を行なえる人手の不足もあって、参謀長が一手に引き受け
ざるを得なくなっていた。

それらの処理に忙殺され、参謀長の徹夜は既に四日目に突入している。

機関内部の失策を完膚無きまでに許さぬ主がアジトを留守にしている間に
片付ける為の突貫作業であったが、不運にも当初の予定より三日早く主が
帰還してしまう。

参謀長の無茶の甲斐無く、崩落事故の全ては主の知るところとなってしまった。

事情が事情だけに職位剥奪こそ免れたものの、事ある毎にその事件について
陰湿かつ執拗に突いてくる為、参謀長の胃薬その他薬剤の服用量は先月の倍に
まで増えてしまっていた。

(―――こんな思いをするならば、放逐された方が幾らかマシだったが……)

しかし、機関にとっての放逐とは死と同義であり、彼もまたそうした同僚や
部下を見てきた為に、命あっての物種と諦める他に術が無かった。

それが、この機関に属する者の宿命なのだ、と―――


「崩落発生後、半壊した第一研究棟より辛うじて機能の残ったモノを回収させ、
 こちらに退避させております」
「…………」
「応急措置として、此方の薬師達や職人達が現在総動員で出来得る限りの延命
 処置を行なっております故、今すぐに朽壊することはまず有り得ない筈です」
「当然だ、アレの替えは無いのだからな」

階段の途中より見下ろす二人の視線の先にあるのは、緑色の溶液に満たされた
大型の浴槽に沈む、不定形な物体どもの姿であった。石の様な物体に肉塊が
張り付いているようにしか見えぬそれらは、時折不気味にその塊を震わせる。

「して、どのくらい残った?」
「例の抽出した情報と照合する限り、全体の五割程度しか回収できず……」
「五割、たったの五割だと……!」
「も、申し訳ございません。何分アレには生体組織と思われる部品が数多く、
 それらが事故の影響で使い物にはならなくなってしまい……」
「分かった。兎も角」
「はっ……!」
「回収出来なかった五割を補う策を講じねばならん。分かっているな?」
「はっ……最善を尽くします」

浴槽に沈む物体は、時折生物の如く痙攣し、水面を震わせる。

「しかし、誠に不運なことに欠損した部品の大半がそれぞれの「核」を成すもので
 あった為に、幾ら延命処置を施したところで限界は目に見えております。朽壊
 するのも時間の問題でしょう」
「…………」

暗闇の中で、状況説明を受けていた方の表情こそ窺い知ることは出来ないが、彼の放つ
重圧に満ちた気配が、その説明を快く思っていないことを物語っていた。その気配に
たじろいだ片方が、取り繕う様に口を開いた。

「……ただ、先日の調査報告にありました例の物体、報告書通りの諸元が望める
 のであれば、或いは……」
「そんなことは貴様に言われるまでも無い。私とてアレが来るのを一日千秋の思いで
 待ち焦がれているのだ。だが……」
「何か問題が?」

男はしばらく黙った後、重々しく口を開いた。

「此方の予測の範疇から外れたところで、足止めを喰らっている」
「足止め、ですか……」

その言葉尻に何事かを察した男は、ジロリ、と参謀長に白眼を向けながら続けた。

「報を聞きつけて現地調査に向かわせた連中も、原因が皆目掴めぬと白旗を上げおった」
「…………」
「だが、幾らリスクを孕んでいようとも、これ以上無為に足止めをさせ続けるつもりも
 毛頭無い」
「それでは……」

しばしの沈黙の後、機関の主は参謀長に向き直って言った。

「……奴を使う。三日以内に会う手筈を整えておけ」

その声を受けてか、浴槽の水が再び震えた。

                      ◇   ◆   ◇   ◆   ◇

地下に潜る者達がいれば、地上を這いずり回る者達もいる。

ビスク港・灯台。

今、この崩壊寸前の灯台の中で輪になって地べたに座っている三人もまた、
そんな者達だ。

戦後処理部隊EBN・ビスク班。それが、三人が属している部隊である。


戦後処理部隊。

戦後発足したダイアロス暫定連合によって結成された、ダイアロスの復興を
目的とした部隊。

―――と、肩書きこそ大層なものなのだが、当の暫定連合が既に形骸化して
しまっており、自然、連合によって結成されたこの部隊も張子の虎同然に
成り下がってしまっていた。

一時は解隊も危ぶまれ、事実、暫定連合が事実上形骸化した折にはその煽りを
受け、解隊の一歩手前まで行きかけたのだが、ダイアロスの住人達へ復興を
進めていることを形だけでも示す為の「物的証拠」として、止む無く存続が
決定された経緯がある。

現在の彼らは、実質上各勢力内の支隊となっている。

特にビスク班の扱いは散々なもので、調査権や執行権などの部隊独自の権限を
持たない、言わば棚晒しにされた栄職同然の部隊でしかなく、あくまで国内に
おいて、本隊の手に余るほどの激務、或いは本隊を動かすまでも無い雑務が
出た場合にのみ、稼動を許可されていた。

以前、第三騎馬隊の受け持ちであった盗賊団の殲滅を実行に移してしまった際に、
隊長が彼らを「ゴミ処理部隊」と揶揄したのも、そうした背景があってのことだ。


「二代目」結成当初、各々自身が果たすべき目的を持って集った三人ではあったが、
曲りなりにも隊に所属する以上、僅かばかりの気概を持って任務にあたるつもり
ではいたのである。

「戦後処理部隊」と大きく出た以上、何かしらの大仕事があって然るべきでは
ないか、そんな幻想にも似た考えが僅かに頭をよぎるのは、自然の成り行きとも
言えなくはない。

―――もっとも、最後に参加することとなったスカーフェイスのみは、
ドワイトが率いる部隊にロクな仕事なぞなかろうという先入観を持って、
事の成り行きを見守っていたが。

実際には、そのスカーフェイスですら閉口する凄まじき内容であった。

何しろ、初めて正式な形で与えられた任務が河原のゴミ拾いである。当然ながら
三人のモチベーション低下は甚だしく、任務に就いてからも現場では約一名を
除いては不満の声が絶えなかった。

結果として越権行為として処理されたものの、偶然発見した野盗を襲撃し、
挙句アジト諸共壊滅と追いやった遠因には、任務に対するやり場の無い
憤りがあったのは疑い様が無い。


だが、どのような経緯があるにせよ、軍という組織に属する以上、組織の方針への
背徳は重大な規律違反である。

まして、越権行為などはその最たるものであり、如何に組織の末端に名を連ねる
者達が起こしたこととは言え、否、末端が起こしたことだからこそ、厳罰をもって
処断しなければ軍組織全体の規律が危うくなる。

―――と、強く主張したのは実害を被った第三騎馬隊であったが、戦後処理
部隊というダイアロスの人々に対する「物的証拠」の必要性を説かれては、
如何に発言力の強い彼らとて引き下がらざるを得なかった。


組織の規律という観点で見れば、確かに三人の行動は立派な重罪ではある。

しかし、結果論ではあるが、彼らの行動はダイアロスの住人に対する脅威を未然に
防ぎ、彼らを守るという根本的な原則には即したものだ。ならば、それを罪に問う
必要性は無い。加えて、今は慢性的に人手が足りぬ状況である。軍にとって有用な
人員を左様な些事にて切り捨てるのは賢明では無い。

―――と、いうのが上層部の最終的な決定であった。


それでもなお第三騎馬隊は食い下がったが、「規律違反という観点で見れば、貴公等
こそ裁かれるべきであろう。禁止事項とされている囮捜査の実行と住人達への露見、
よもや忘れたとは言わんだろうな?」と返されては口をつぐむ他無く、渋々上層部の
決定に従わざるを得なかった。


(以下、じきに追記予定……)
by DunkelFanG_Ez00 | 2009-05-22 03:35 | MoE書き殴りSS・EBN編