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Solo Prowler Geist
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未だ、迷走中。

by DunkelFanG_Ez00
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EBN修正版・6話
修正版試作。

修正前はこちら




『戦後処理部隊EBN 06』

戦後処理部隊EBNビスク班。その初任務から数日後。

ビスク国軍地下営倉―――。


EBN修正版・6話_c0111048_1553109.jpg
「実に、無様な姿だ。まあ、当然の末路ではあるがな」
「……」
「何しろ、自身の役目を果たすどころか、一緒になって暴走してしまう体たらくだ。問答無用で
 騎馬隊の連中に処刑されなかったのは、ある意味で奇跡とも言えるだろう。まったく、大した
 ストッパーだよ、君は」

営倉を訪れたドワイトは、覗き窓から覗くこともなく中にいる人物に向けて言い放った。


中の人物とはEBNビスク班の一人、ボルクレイドである。

彼はドワイトの正鵠を射た言葉を返す術も持たぬまま、黙って言われるがままになっていた。

実際、彼が残りの二人を止められなかったのは事実であり、二人と共に野盗狩りを実行に
移してしまったのもまた事実だった。加えて、事態はそれだけでは済まなかったのである。


数日前、襲撃後の野盗アジト―――。

「隊長、野盗連中が全滅しております!」
「何ィ! どういう……」
「たっ、隊長コレを! 囮に使っていた兵士が!」
「何と……!」

兵士に促され、ビスク国軍第三騎馬隊の隊長が目にしたものは、そこいらに転がる野盗どもの
死骸と、彼らへの内間として使っていた兵士の、喉を貫かれた無残な死骸だった。

怒りで額に青筋を浮かべた隊長が、充血した目をギラリと光らせて配下の兵士に下知を下す。

「そこの三人を引っ立てろ! どういうことか、その身体にとっくと訊かねばならぬ!」
「……待ってくれ、我々は戦後処理部隊だ。只今任務中で……」
「何ィ……EBN、EBNだとぉ!? ゴミ処理部隊が、何故我等の管轄を犯して野盗狩りなぞを!
 益々もって引っ立てなければ、こやつも浮かばれんわ! 者ども、引っ立てい!」
「くっ、テメェらッ!」
「ちょっと! もう少しレディの扱いに気を遣ったらどうなのッ!」

見れば、女とオカマ二人が兵士達に両脇を羽交い絞めにされて連行されていた。そして、
ボルクレイドの両脇にも兵士が二人つき、その腕をガシリと掴んだ。

「クックック……見たところ貴様がゴミ処理部隊の隊長と見た。貴様は特に厳しく問い詰め
 抜かねばならんだろう! 精々、覚悟を決めておくことだな!」


その後、三人はビスク国軍本営へと連行されたが、実際に取調べを受けたのは第三騎馬隊の
勝手な認識で隊長に祭り上げられたボルクレイドのみであり、他の二人は早々に解放された。


ボルクレイドに対する取調べは過酷を極めた。昼夜を問わず取調室へと連行されては、
同じ様な質問を何度も繰り返しされるのである。如何なる状況にも耐え抜くことを戦場で
自得していると自負していた彼であったが、これには流石に気が滅入りそうになった。

そんな繰り返しの数日間で、すっかり憔悴しきった最中でのドワイトの面会である。

しかも、此方の言い分など耳も貸さぬといった風情で、延々と今回の不手際に対して一方的な
批評を下している。

だが、ボルクレイドも黙って言われるがままになる気は無かった。ドワイトの言葉がようやく
途切れたところを狙って、扉越しの彼に一矢報いようと口を開いた。

「……軍の連中との縄張り争いにさえ負けた貴様に、そんな謂れを受ける筋合いは無かろう」
「ふむ?」

返って来たその声には、僅かに嘲笑めいた響きが篭っていた。

「……そんな貴様の下についた上に、あんな小娘二人のお守りやら尻拭いやらまでせにゃならん。
 どう考えても……」
「割に合わんかね? この仕事は」
「……当然だろう。俺は自身の目的の為に志願……というよりは、貴様の言葉に釣られたクチだが、
 だからと言って、俺はドブさらいやベビーシッターの職を求めたつもりは無い」
「ならばどうする。辞めるのかね?」
「……そうさせてもらう。ここを出たらすぐにもな」

ボルクレイドの言葉に返って来たのは、明らかに嘲笑を噛み殺している忍び笑いだった。

「ここを出る、か。本気で出られると思っているのかね?」
「……なんだと?」

遂にドワイトは堪え切れずに笑い出した。静かで、かつ冷淡な笑い声がしばらく続いたかと思うと、
唐突に声の調子を戻して再び語り始める。

「私が今日ここへ来たのは、君をここから出す手続きをしてやるつもりだったのだが……。
 君がずっとここにいたいと言うのなら、私も無理強いはしない。精々臭い飯でも食みながら、
 ゆるゆると朽ち果てるがいい」
「……なっ」
「まあ、そもそも君には私の助けなど要らんだろう。君にとっての私は、軍のクズ連中との
 縄張り争いにすら負けてしまうクズ以下だ。そんなのに助けられても仕方があるまい?」
「……貴様」
「だが仮に、君自身の力を以ってここから脱走したとしても、君は何の庇護も受けられぬ浮浪の輩に
 成り下がるしかない訳だ。その末路は今更君に言うまでもなかろう。精々、賞金首として追われる
 身になるのが関の山か、それとも……」
「……それとも、何だ?」
「君達が先日殲滅した兵士崩れと同様、野盗に身を落して暴虐の限りを尽くすか」

ボルクレイドはその言葉に一種の不快感を覚えた。扉越しですら、ドワイトが口元を歪めているのが
はっきりと見えたような気がしたからである。

「……いずれにしても後に待つのは死、のみということか」
「その為のEBNだ。軍のクズどもの手に負えぬ奴等を追い詰めて殺す……。今でこそ表立って
 動いているのは三下程度の兵士崩れどもだが、いずれ地下で息を潜めてる連中が蜂起すると、
 私は睨んでいる」
「……確証は?」
「無い。だが……現在の混沌とした情勢を、我欲が為に覆さんとする者が決していないとも
 限るまい? 現に先の戦争とて、元々は我欲に塗れた両国の重鎮どもがノアストーンの力を
 手に入れんが為に起こしたのだ」
「……未然に防ぐって脳は無いのか、貴様には」
「島に住まう者達全員を縛り首にでもしろと?」
「…………」
「兎も角、今は雌伏の時だ。いずれ起こるであろう脅威に備えて、我々はこの島に下地を作る
 必要がある。ダイアロスにEBNあり、とな。その為には、例えどんな汚れ仕事だろうとやって
 貰わねばならん」
「……至極、ご尤もな話だな。だが……」
「だが?」
「……俺はまだ、貴様の下に戻るとは言ってない」
「やれやれ、戻らざるを得んようにせんといかんのか。この頑固者め」

そう言うと、ドワイトは覗き窓を開いて窓越しに一枚の写真を中のボルクレイドに見せた。
窓の開く音に反応したボルクレイドの目が写真に写る像を捉えるや否や、驚愕に見開かれる。

「この写真はつい最近撮られたものだ。君にとっては何者にも換えがたい"獲物"のはずだが」
「……つまり、情報と交換に戻れと。そういうことか、貴様……!」
「至極単純な餌だが、それだけに君には最も効果的、かつ大いに魅力的な筈だ。何しろ君が
 戦場を駆け巡っても遂に出会えなかったのだしな」
「……くっ」
「我々も別件でこいつを四六時中マークしている。故に情報は常時入ってくるという寸法だ」
「…………」
「さて、面会時間もそう長くは無い。そろそろここらで最終通告といこうじゃないか」
「…………」
「戻れ」

有無を言わせぬドワイトの言葉に、ボルクレイドは憤怒と悔恨の入り混じった、何とも
形容し難い表情を浮かべた。しばしの逡巡の後、彼の眼が決意に見開かれ、極々自然な
形で、彼の口が言葉を紡ぐ。

「……分かった、戻ってやる」

その言葉に、扉越しの敵が笑みを浮かべた様子が、扉越しに感じる気配で伝わってきた。

「よろしい。それでは上にいる連中にその旨を伝えてくる」

ボルクレイドの脳裏には、ドワイトがしてやったりな表情を浮かべながら階段を上っていく
情景がありありと浮かんでいた。

「―――!」

声にならぬ苦しみは涙となって流れ、内に篭った苛立ちは鉄拳と化して壁へと叩き込まれた。

だが、壁に刻まれた拳の跡は、やがて、自身の無力さを証明する物的証拠に取って代わり、
出所までの間、夜な夜な彼を苛み続けたのであった。
by DunkelFanG_Ez00 | 2008-11-05 06:46 | MoE書き殴りSS・EBN編